無理して笑うな
「あの、弘樹君じゃありませんか?俺、昔隣の家だった中村 悠斗です。」
俺は唯のお兄ちゃんを弘樹君と呼んでいた。
弘樹君は妹である唯と幼馴染みの俺を、弟のように可愛がってくれ勉強も教えてくれたりした。
弘樹君は俺のことを思い出したのかぱあっと笑顔になると、さっさと送信ボタンをおして俺の肩を叩いた。
「悠斗じゃないか!
おばさん、お久しぶりです。瑞希ちゃんも大きくなったねぇ。」
弘樹君の笑顔に2人も思い出したようだった。
「あら!嵯峨山さんちのお兄ちゃん!
また大きくなって。最後に会った時はまだ高校生だったのにねぇ。」
「そうですね!引越しのことお伝えするのが遅くなって申し訳ありませんでした。
唯に自分から言いたいと口止めされていたので…」
「いいのよ。
唯ちゃんも言いにくかったんでしょ。それより唯ちゃんとっても綺麗になったわね!すっかり有名になっちゃって!」
弘樹君はハハッと爽やかに笑うと店の奥の人だかりを見た。
「あそこにいますよ。呼んで来ましょうか?」
俺は、それを聞いて固まってしまった。