無理して笑うな
〈悠斗said〉
瑞希が帰ってきてから母さんの運転で少し遠いレストランに行くことになった。
そこは口コミで人気になったお店で、美味しいと評判なことから母さんも1度行ってみたかったらしい。
俺達が駐車場に停めた車から出て店に入ると、店の奥の方で人だかりが出来ていた。
ここは芸能人も数多く来るらしいとは母さんから聞いていたので、誰か来ているのだろう。
俺達は少し気になったが案内されるままに席についた。
3人ともメニューを決め、店員さんを呼んだ。
出てきたのは整った顔立ちに短髪が似合うかっこいい店員さんだった。
「はい、ご注文をお伺いします。」
母さんは普通に3人分のメニューをたのみ、瑞希も友達とメールするために携帯をいじっている。
しかし、俺はその店員さんになんとなく見覚えがあった。
「ご注文は以上ですか?」
「あ!!」
俺は柄にもなく大きい声を出してしまった。
それは、胸元の名札に『嵯峨山 弘樹』とかかれていたから。
しかし奥で騒いでいる人だかりのおかげで恥ずかしい思いはせずに済んだ。
店員さんはは驚いたような不思議な表情をして俺を見た。