グレープフルーツを食べなさい
「ああ上村くん、お久しぶり」

 白々しい美奈子の声に唇を噛む。美奈子からは上村のこと見えていたはず。さっきの発言も、実はわざとだろうか。やっぱり美奈子の性根の悪さは変わってないわ。

「おお相良、久しぶり。お話中悪いんですが、邪魔なのでどいていただけますか三谷先輩」

「えっ、私!? ごめんなさい」

 上村には今の私たちの会話が聞こえてなかったんだろうか。私が一歩横に避けると、上村は素知らぬ顔で通り過ぎた。

 廊下の角を曲がり、上村の姿が見えなくなったところで、美奈子がまた口を開いた。

「上村くん、出入りのコンサルタントの人と付き合ってるって本当なんですか? 噂で聞いたんですけど」

 もう噂になってるんだ。オアシス部の女の子が漏らしたんだろうか。

 上村を狙ってると言われてたわりに美奈子の表情は淡々としていて、単純な好奇心から知りたがっているように感じた。


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