エトワール
「真希ちゃーん!会いたかったよー」


ふにゃりと破顔して両腕を広げた棗は、もどかしそうにレジカウンターを回って彼女のもとにやってくると、自分より頭一つ分は小さい体をギュッと抱きしめる。

日本では馴染みのない挨拶に、ちょっぴり恥ずかしそうに笑う彼女。

まだこのお店を開く前、パン作りについて学ぶためにヨーロッパへ武者修行に行っていた棗は、その頃の癖が抜けていないので挨拶がどうしても外国風になってしまうのだと彼女には語っているが、真実を知っている菜穂は、毎度その光景に呆れたように息を吐く。

挨拶にしては長い抱擁がようやく解かれたところで、彼女は改めて目の前に立つ男性を視界に映す。
そして、難しい顔で首を傾げた。

その理由は、全身を包む白の爽やかさとはなんともミスマッチと言わざるを得ない、派手な容姿。


「棗さん、相変わらずお仕事着が似合わないですね。棗さんはお顔的に、バンドマンとか、美容師さんとか、……あっ!あとバーテンダーとか似合いそうですよ」


いわゆるイケメンというやつで、目鼻立ちがハッキリとした顔の棗は、裏で黙々とパンを作っているよりも、表で華々しく活動しているのがよく似合う。
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