Wonderful DaysⅢ【berry’s cafeバージョン】
「……マリア?」
電気のついていない部屋は、真っ暗で。
入り口付近にある電気のスイッチを入れて、明るくなった部屋を見回してみる。
「マリア、いないの?」
窺うように名前を呼んでみても、やっぱり返事はない。
シン、と静まり返った部屋には、マリアの姿どころか人がいる気配すらなくて
───ここにもいない、か……
思わず溜め息が漏れてしまう。
鍵が開いているからと、少しでも期待していただけに落胆も大きい。
残る二つの準備室にもマリアがいなかったら……
そんな不安を押し殺して、歩き始めようとした時だった。
教室の隅にあるゴミ箱から、何かが振動する音が聞こえてくる。
「……………………」
何か、なんて考えなくても頭の中では理解していたと思う。
だってそれは、よく耳にする音だったから。