Wonderful DaysⅢ【berry’s cafeバージョン】
でも問題は……
何でそれが、誰もいない準備室のゴミ箱の中から聞こえてくるのか。
別れ際に準備室へ行くと言っていた言葉と、未だに姿を見せないマリア。
もう嫌な予感しかしなくて、急いでそこへ駆け寄った。
勢いよくひっくり返したゴミ箱の中からは、予想通りマナーモードになっていたスマホが出てきて。
「……っ…!」
更にスマホの近くに転がり落ちてきたモノに背筋が凍る。
───何で、これがゴミ箱に捨てられてるの?
明るくなった部屋で、確かめる必要もないほど見慣れた黒いそれに伸ばした手は震えていた。
ポケットから自分のスマホを取り出して、着信履歴から電話をかける。
『綾』
「……れ、」
呼び出し音がなる前に呼ばれた名前に、うまく声が出ない。
『いたのか!?』
そこから何かを感じ取ったのか、焦りの色を隠さない声色に
「ねぇ、蓮……」
『何だ』
「マリア、多分もう学校にはいないわ」
『何で、そんなことがわかる?』
「だってあの子……今、変装してないもの」
何とか紡いだ言葉は、絶望的なものだった。