Wonderful DaysⅢ【berry’s cafeバージョン】
俺、間違ったこと言ってないよね?
段々と曇っていく彼女の表情が気になって、もう一度声を掛けようとしたけど
「───帰るぞ」
マークさんの低くなった声が、それを遮った。
ハッとして振り返れば、皆が席を立っていて。
それを合図に忙しなく動き出したのは、黒服のボディーガード達。
外で待機していた車に連絡を入れて、ホテルの表玄関へと続く通路の安全を確認する。
「……………………」
この安全な日本で、ここまでする必要は無いと思うんだけど。
テロの多いイギリスで生活しているマークさん達にとっては、これが普通で。
俺達日本人からすれば、映画の中のワンシーンでも見ているかのようなこの状況からも、改めて彼らの生活環境が全く違うということを認識させられる。
そんな状況の中で、ボディーガードに囲まれて移動する俺達を、何事かと遠巻きに見ているホテル客。
慣れてしまえば、こんな視線は気にならないと思うんだけどな……。
表玄関前で待っていたリムジンに乗り込んで、ゆっくりと走り出した帰りの車内でも、マリアちゃんの表情は硬いままだった。