忘れた

元カノ




そんな早水を勇介の前に連れて行ったら、何を言い出すか分かったもんじゃない。


それだけは阻止したかったのだが。


「このまままっすぐでいいの?

曲がるとき早めに言えよ」


現在、早水とあたしは自転車に2人乗りで、勇介の病院へ向かっている。


「次の交差点、右」


「オッケー」


なぜなら、あたしは早水に借りがあったから。


あのとき、借りは返すって言ったよな?だったらさ、お前の彼氏に会わせて。それで借りはチャラ。


そう言われて、断れなかった。


文化祭から一夜明けた今日は、土曜日。


学校で昼の2時に待ち合わせして、そこから一緒に病院へ行くことになってしまった。


休みの日まで、早水と一緒なんて。


ああ、やだやだ。


「何が嫌だって?」


前を向いたまま、早水が怒り気味に言った。


心の声が口に出ていたようだ。あたしは慌てて誤魔化した。


「寒くて嫌だなって思っただけ」


「あそ。そりゃ寒いよ。もうすぐ12月だし」

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