忘れた
季節はすっかり冬。


あたしは茶色のダッフルコートを羽織って白のマフラーに白の手袋。


下は黄緑のスキニー。


早水はワインレッドのダウンジャケットに、黒のネックウォーマー。


下はダメージジーンズで、胸元にはキラリと光る十字架のネックレス。


普通にお洒落だと思った。早水のくせに、生意気だ。


「早水って、意外とお洒落だよね」


あたしの言葉に早水は笑いを漏らした。


「お前だって、意外とお洒落じゃね?

普通に可愛いと思った」


「は? ちょ、何言ってんのよ」


あたしは力いっぱい、早水の背中を叩く。


「痛ッ」


大きく自転車が揺れる。早水は片手で背中をさすった。


「お前、褒めてんのに叩くとか。しかもめちゃくちゃ痛えし」


「そんなに痛くないでしょ。大げさ」


早水に可愛いとか言われても、嬉しくないっつーの。


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