サヨナラなんて言わせない
「涼子さんっ！！」

すぐに後を追ったが、俺が追いついたのはエレベーターの扉が締まった瞬間だった。
ガラス越しにどんどん彼女の姿が遠ざかっていく。

「くそっ！！」

俺は階段まで移動すると全速力で下まで駆け下りていく。
こんなに全力で走るなんて、一体いつぶりだろうか。


「はぁはぁはぁっ、涼子さんっ！！」

1階まで降りてエレベーターを見ると既に上階へと移動し始めていた。
俺は急いでマンションの外へと走る。

「涼子さんっ！！」

時既に遅し。
彼女の姿は遥か向こうに小さく見えるだけになってしまっていた。

「はぁはぁはぁ････くそっ！あんなに熱があるのに無茶だ･･･」


こんなことなら力尽くでもいいから引き止めるべきだった。
ただでさえ熱が上がりやすい彼女にとってこの状況は最悪だ。

「俺のせいだ････」

既に人の気配のなくなってしまった方を見つめながら、
彼女が倒れないことを願うことしかできない自分がとてつもなく不甲斐なかった。
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