サヨナラなんて言わせない
「涼子さ・・・・・・涼子?」

静かに名前を呼んでみたが、彼女は何の反応も示さない。
だがしがみつく手の力だけは強かった。

まるで行かないでくれと言っているように。


一瞬だけ躊躇った心は次の瞬間には揺るぎない想いへと変わる。


俺はゆっくりと手を伸ばすと、彼女に掛かる布団をそっと持ち上げた。
足に巻き付いた彼女の手をそっと剥がし、そのままその手を握りしめたまま自分の体も布団の中に滑り込ませる。
温かい・・・と思った時にはもう彼女が俺の体にしがみついていた。

俺の胸に顔をうずめるようにぴったりと寄り添って離れない。


小さくて柔らかいその懐かしい感触に、ふいに涙が零れそうになる。
グッと息を呑んでそれを堪えると、震える手で彼女の背中に手を回した。
触れた先から全身に熱が広がっていく。


「おやすみ・・・」


宝物を壊さないようにそっと包み込むと、体中で彼女のぬくもりを感じながら、やがて俺も夢の世界へと落ちていった。

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