サヨナラなんて言わせない


朝5時。
久しぶりにも関わらずまるで昨日までやっていたかのように体が勝手に動き出す。リビングのカーテンを開けて朝日をたっぷり部屋に入れると、キッチンに行ってコーヒーメーカーをセットする。その間に朝食の準備を始め、部屋中にいい匂いが充満し始めた頃がそろそろの時間だ。

カタン・・・

予想通り。
まだ寝ぼけたような様子で涼子がリビングへとやって来る。
俺はそんな彼女を満面の笑みで迎えた。

「おはよう、涼子」

「・・・あ、おはよう。・・・・早いね?」

「そう?ここにいるときはいつもそうしてただろ?2ヶ月空いても体が覚えてるよ」

「そっか・・・」

「もうすぐご飯できるから。先に顔洗っておいで」

「うん。・・・ありがとう」

少し照れくさそうにはにかみながら笑う彼女がいじらしい。
今すぐに駆けよって抱きしめたいのに手が汚れているのが恨めしい。

一体どこまでこの気持ちは暴走するんだと自分で苦笑いしながら、食事の準備を進めていった。
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