サヨナラなんて言わせない
「いただきます」

手を合わせて綺麗なお辞儀をした涼子は、お椀を持つと味噌汁を静かに口に含んだ。やがて口を離すとホッと一息つき、幸せそうな顔で笑った。

「おいしい・・・」

「よかった。いっぱい食べて」

「ありがとう。・・・・この前からずっと思ってたけど、料理の腕が上がったよね。自炊してるの?」

「いや?全く。俺の部屋見ただろ?料理ができる環境じゃないよ」

ははっと笑いが零れる。そう、料理以前の問題で物が何もない。

「何もしてないのにこんなにできるなんて・・・相変わらず器用だね」

「それは違う。涼子に喜んでもらいたいって思いがそうさせてるだけ。他の奴に同じ事やれって言われてもできないよ。涼子のためだから俺は何でもできるんだ」

「・・・・っ、またそういうこと言う・・・」

「事実だから仕方ない」

サラッと答える俺に涼子の頬が赤く染まる。

「・・・・体は大丈夫か?」

「え?」

「おとといからかなり無理させたから・・・・」

俺の言わんとすることをようやく理解した彼女の顔がさっきとは比べ物にならないくらいボンッと一気に茹で上がった。
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