サヨナラなんて言わせない
「南條さん、俺も一緒に連れて行って下さい」

俺が告げた一言に彼はあり得ないほど驚いていた。

「お前何言ってんだ?森さんに憧れてここに入ったんだろう?」

「そうです。森さんのことは今も変わらず尊敬しています。でも今の俺にとってそれ以上に尊敬するのは南條さん、あなたなんです。だから南條さんのお手伝いをさせてください」

「駄目だ。俺のところにきたところで会社が軌道に乗る保証なんてどこにもない。お前は森さんの下でしっかり鍛えてもらえ。せっかくの才能を無駄にするな」

予想はしていたが、彼は俺がついていくことに反対した。
それは俺の将来を思ってのことだってこともわかってる。
でも、それでも。

「才能があると言うのならば連れて行って下さい。俺は南條さんの下で頑張りたいんです。森さんも快諾してくれました。お願いしますっ!!」

そう言って膝につきそうなほど頭を下げた俺に南條さんは心底驚いていた。
結構長い沈黙が続いたと思う。
しばらくすると彼の大きな溜息が聞こえてきた。

やっぱり駄目なのだろうか・・・?

「お前本当にバカだろ。将来が安泰な森さんのところにいた方がいいに決まってるのに。どう転ぶか何の保証もない俺のところがいいだなんて・・・・ほんとバカすぎるよ。・・・・・・・・・・・でも、ありがとな」

その言葉にハッと顔を上げると照れくさそうに笑う南條さんがいた。

「えっ、それじゃあ・・・?」

「・・・・・・あぁ、こちらこそ宜しく頼む」

「・・・・・は、はいっ!!!任せて下さいっ!!!」

満面の笑みでそう叫んだ俺に、彼は「やっぱりお前声がデカイ」なんて言いながら照れ笑いした。
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