サヨナラなんて言わせない
「司、どうしたの?そんなに飲んで」

店に入ってからずっとハイペースで酒を煽っている俺が心配になったのか、奏多が他の接客の手を止めて俺のところへとやって来た。

「そんな飲み方するなんて司らしくないよ。何かあったの?」

言いながら俺の手の中にあるグラスを取り上げる。

「奏多・・・・お前に頼みがあるんだ」

「え?」

俺の隣に腰掛けた奏多の顔を見上げると、躊躇いながらも次の言葉を続けた。

「お前に俺の女を装ってほしいんだ」

「・・・・・は?」

奏多は何を言われているのか全く理解できていない。

「・・・・・涼子が・・・・お前のことを俺の浮気相手だと勘違いしてるんだ」

「え・・・?何言ってるの?そんなの私のことをすぐに説明すればいいだけじゃない!」


そう。その通りだ。
奏多は俺の幼なじみでしかも男なんだって言えばいい。
ただそれだけのこと。


事の始まりはあの日涼子を見かけてから2週間後のことだった。
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