サヨナラなんて言わせない
「涼子さん、お風呂を入れました。そのままでは風邪をひいてしまいます。どうかお風呂で温まってきてください」

あれからすぐに風呂にお湯を張ると、俺はその足で彼女の部屋へ行った。
そっと声をかけるが何の反応もない。
動いているような物音一つ聞こえてこない。

もう寝ているのだろうか・・・?

「ここにタオルとホットココア置いておきます。後ででいいのでお風呂入ってくださいね」

彼女の体が心配だが部屋に入るわけにもいかない。
俺はドアの前にタオルとココアを置くと、静かにその場を後にした。



それから心配で朝まで眠ることができなかったが、
結局彼女は一度も部屋から出てくることなく朝を迎えてしまった。

5時、いつものように朝食の準備に取りかかる。
少しでも温まってもらいたくて野菜がたっぷりのうどんにした。
ちょうど一通りの準備を終えたところで彼女が部屋から出てきた。

「あ、おはようございます。昨日は本当にすみませんでした。体はだいじょうぶ・・・・・」

青白い顔をして無言で俺の横を通り過ぎると、そのまま脱衣所へと消えてしまった。
< 94 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop