未明
シーン1 記子(ノリコ)
   3月末の未明。国道沿いの海岸。
   砂浜では要子がコンクリートブロックに腰をかけ、
   一斗缶で何かを燃やしている。
   一斗缶の周辺だけが、炎でぼんやりと照らし出されている。
   要子の傍らには、山積みにされた大学ノートがある。
   波の音が聞こえる。
   要子の背後から記子が登場。
   要子は気にする様子もなく、1冊のノートを手に取り、ページを破る。

記子 「それ、どうするの?」

   要子は破り取ったページを一斗缶の中にくべる。
   次のページも破り、ノートをどんどん燃やしていく。

要子 「私、この町から出ていくの。」
記子 「知ってるよ。」
要子 「だから、今日は記子とお別れをしに来たんだ。」
記子 「一緒に連れて行ってはくれないんだね。どうして?」
要子 「…本当のこと言うとね、私、記子が大っ嫌いなの。
    一緒に居たら、私、すごいしんどいから。
    だからお願い、私の前から消えて。」
記子 「…いいよ。それを燃やして要子が安心できるなら、
    全部燃やして。」

   記子は要子の背後に立ちつくし、
   ノートが燃やされてゆくのを見つめている。
   要子は決して背後を振り返ろうとしない。
   波の音が大きく聞こえる。

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