不道徳でも愛してる2〜もうひとつの愛のカタチ〜【短編:完結】

迷う事なく無言のまま頷いた私に

『……そうか。』

嘉之さんは寂しそうな顔で

私を見下ろした。


『…里依奈。
僕は君を心から愛していたし
大事にしてきたつもりだったし
守ってきたつもりだった。』

「……嘉之さん。」

『…僕は、今でも後悔している。

あの頃は板挟みにあって
どうしていいかわからなくなって
同い年のアイツに君を紹介した事が
こんなカタチになってしまった事を…。

でも、例え僕が紹介していなくても
君とアイツはきっとどこかで出会って
こうなる運命だったのかもしれないな…。』

「……。」

黙ったままの私に

『…本当ならこのまま君をどこかへ
連れていってしまいたいけど
もう君はアイツの妻だ。

それに僕は君とアイツが
神に誓うのを見届けたい。

…それが、里依奈の元夫である僕の
最後の仕事だからな…。』

嘉之さんはそう言って

『…今までありがとう。
短い間だったけど
僕の妻になってくれて…。

…燎次に幸せにして貰えよ。』


と、私の前に右手を差し出した。





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