失 楽 園

┗「それ」を見た日



…――その日も、
姉さんは怒られていた。

頬を張られ、腹を蹴られ、
髪の毛を引っ掴まれて
罵倒されていた。



成績が奮わなかった。



ただ、それだけで
父さんと母さんは、
姉さんを酷く傷つけるんだ。


「やめて!!
 やめてよ、父さん! 母さんも!!」


僕は何も出来ず、
叫ぶことしか出来ず、
泣くことしか出来なかった。

今までの僕は、
余りにも無力かつ馬鹿だったのだ。


殴られる姉さんを、
泣き叫ぶ姉さんを、
ただ、見ていることしか
出来ないだなんて。



弱い自分を呪った。
何も出来ない自分を憎んだ。


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