蒼い雨に濡れながら
第6章 エピローグ
そう笑っていたの。健ちゃんはね、笑っていたんだよ。そして、「美樹、もう、だめだよ、俺。また、落ちちゃった」って言ったの。「何がだめなのよ。どうしてだめなのよ」って私は言った。「行けばいいじゃない。私立に行けばいいじゃないの。たかが国立に落ちたくらいで、何がだめなのよ」って言ってやった。そうしたらね、彼は急に私を強く抱きしめたの。彼の暖かい鼓動が伝わってきた。そして、私に優しくキスしてくれた。そしてね、「うん、そうだね。行くよ」彼はそう言ったのよ。そしてきつい位に私を抱きしめた。そう、あの人は私に、「行くよ」って言ったんだ。今から思えば彼は、何処に行く気だったのだろうね。
笑うよね。笑っちゃうわよね。ねぇ、あんた、どう思う?馬鹿でしょう?笑いなよ。でもね、健ちゃんは私の彼なのよ!ねぇ、人間の生き様って一体何なのだろう?人間が生きていくって一体何なのだろう?そうだ。彼みたいな弱虫はきっといない方がいいんだ。きっとそうなんだ。だって彼がいても何にもならないじゃない。回りに迷惑ばかりかけて、皆に心配ばかりさせて。だから、いない方がいいに決まっている。でもね、それでも健ちゃんはね、私の彼なんだよ。
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