臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「どうやって克服するんですか?」

 康平が訊くと、内海は真顔で言った。

「完全な克服なんか出来ねぇよ。俺は強いって、自分にハッタリかますものあるが、試合までに真剣にやってきた練習が頼りだな」

 山本も話に加わった。

「それも無意識に出来るようになるまで、反復して覚えた技は試合でも裏切らねぇで出るからよ」

「そうさ、俺もこの前の試合一ラウンド目に右パンチを食らって意識が飛んだんだが、気が付いたら判定勝ちだったんだよ。……多分体が無意識に動いてたんだろうな」

「他の事は分からないが、ボクシングは正直者が馬鹿を見ない世界だと思うんだよ。効率のいい練習を、真面目に頑張ってる奴が一番強いと思うぜ」


「そうそう、なぁーんにもしねぇで、強い天才なんかいてたまるかって信じねぇとやってられねぇよな」

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