臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 最後に梅田が言った。

「サンドバッグ打ちやミット打ちがボクシングじゃない。実際に殴り合うのがボクシングだ。お前達は、やっとボクシングの一端に触れた訳だ」

 一年生達は黙って聞いていた。梅田は話を続けた。

「今日は内海と山本が手加減してくれたが、実際は、相手も本気でお前達を狙ってパンチを打ってくる。今までは基礎がメインだったが、次からは、実戦の為の練習も加えていくからな」


 返事をした一年生達だがやや俯き加減だ。彼らは自分達がまだまだなのを、自覚しているようである。


 飯島が言った。

「なんだよぉ。テンション低いなぁ。お前らはまだスタート地点なんだからな」

 有馬が訊いた。

「俺……いや、自分達は先輩達みたいに強くなれるんですか?」

「なるんだよ、みんながな。殴られて、悔しい思いをしながら、それでも練習を続けられた奴は、みんなそれぞれ強くなっていくんだよ。明日からは五日間の盆休みだから、まずはゆっくり休んでこい。……それと休み明けは、新しい練習メニューも加えるからな」


 一年生達は、やっと夏休みらしい五日間を暮らせる事に、嬉しさと不安の入り交じった顔をしながら練習場を出ていった。

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