臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「康平、何ニヤけてんのよ?」

「そうだぜ、俺達何も変な事は言ってねぇぞ」

 亜樹と健太から責められた康平は、二人の様子を見て可笑しくなっていた。

 会う前からお互いを苦手だと言っていた二人が、共に初めて知ったように話していたからだ。


「あ、いや、何でもねぇよ」

 その事は言えずに言葉を濁した康平へ健太が言った。

「気持ち悪い奴だなぁ。……そう言えば、康平が世話になってる人がいるって聞いてたけど、亜樹さんなの?」

「そう本人から聞いてるんだったら、康平にも自覚があるってことね」


 二人の最初の会話が上手くいったようで、ただ一点を除いて康平は安心した。

「オイオイお前ら、俺をダシにして場を和ますんじゃねぇよ!」

「康平、……ここは図書館なのよ。静かにして!」

「そうそう、俺達は勉強しに来たんだぜ」


 二人から反撃を受けた康平は、降参するような顔をした。

「お前らヤケに連係とれてんな。……ところでもう一人のコは?」

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