誇り高き

兄妹

『久しぶりだね、紅河。いい子にしていたかな?』

『久しぶり、菁河(せいか)兄上。私は、もう幼子じゃないよ。心配はいらない。ちゃんと、母上も家も守るから』

菁河は優しく微笑んで、ぐしゃっと紅河の頭を撫でる。

『紅河のことは信頼してるよ。でも、心配しないとは別だ。紅河は、私の大切な妹なのだからね』





あの幼き日々は、もうどこにもない__________。








『紅河、新しい家族ですよ。菁河。貴女の兄です』

『せいかあにうえ……』

『よろしくね、紅河』

そっと頭を撫でる菁河を、幼い紅河は不思議そうに見ていた。





『兄上、けいこをしてください』

『ごめん。今から仕事なんだ。帰ってきたらね』

紅河の頭を撫でて菁河は出かけていく。



『兄上、おかえり。仕事、随分と長かったな』

『ただいま。三年も見ないうちに、すっかり紅河は大きくなったね』

菁河はいつものように頭を撫でる。

紅河はされるままになりながら、微笑んだ

『兄上は、会うたびに頭を撫でるな』

『紅河は撫でられるのが好きだからね』

兄上の手は、暖かくて大きい。

莵毬の手みたいだ。

だから、紅河は兄の手が好きだった。




『紅河。またしばらく出かけるから、家を頼むよ』

『わかった』

その日は、菁河は紅河の頭を撫でなかった

『………じゃあね、紅河』

『兄上………?』

何となく紅河は違和感を感じたが、それを口にすることはなかった。

だが、その日を境に菁河は帰ってこなくなった。








紅河と菁河が再開したのは、紅河が里を出てしばらく経った頃であった。




















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