誇り高き

記憶ー兄ー

壊してやりたい。

そう思い始めたのは、いつの頃だったか。

もう、細かくは覚えていない。

そう、でも自分が幼い頃だったのは確か。

人の幸せを見るたびに思った。

幸せを壊された時、人は皆感情が抜け落ちる。

それを人は、絶望と呼ぶのかもしれない。

自分は何一つ、感じたことはないが。



何度幸せを壊されても、その度につくり直したのは、一人しかいない。

絶望に堕ちても、いくらでも這い上がった、たった一人の少女。






『兄上』








女声にしては、少し低めの落ち着いた声。

あまり感情を表さないけれど、長く共にいると分かる。

とても、感情が豊かであるということに。

彼女の瞳は、誰よりも鮮やかに輝いていた

だから、思った。

何よりも強く、壊したいと。

君が絶望に堕ちたとき、その瞳はどんな色で染まるのだろうね。

何をやっても壊れない君。

勝負だよ。

私と君と。

君の瞳が、完全に絶望に染まったら私の勝ち。

どんなに壊しても、それでも。

君が幸せを手放さなかったら。

私の負け。

私が負けたら………そうだね。

何でも、一つ。

君の言うことを聞こう。

私が勝ったならば。

永遠に私の掌で踊り続けてもらおう。















ねぇ、紅河。

莵毬は実にあっさりと壊れたけれど。

実に面白く、私の掌で踊ってくれたよ。
















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