誇り高き

禁門ノ変ー前ー









_______ねぇ、嵐の音が聞こえるわ










高杉は東の空を睨みつけた。

禍々しいまでに赤い空が広がっている。

「何かの予感のようだな」

京で何か起こるんじゃないだろうな?

険しい顔をした高杉は、隣に気配が並んだのに気付く。

「どうした?」

「嫌な予感がしやがる。一体長州はどうなるんだ」

「聞いてどうする。わかったとて、何もする事は出来まいよ」

紅河の言葉は冷たい。

余計な期待を、されないために。

「分かっている。だがな、いつも思う。俺にもっと力があったらと」

「………身に合わない力は、己を傷付けるだけだ。望むのはやめておけ」

少し、疲れた顔をして。

紅河は高杉の肩を叩くと、小さく囁いた。

「明日、京へ行く。お前も来い」

振り返った高杉が見たのは、紅河の華奢な背中だけ。

だから、気づかなかった。

紅河の顔が、ひどく歪んでいたことに。




「く……そ……っ」

部屋に戻った紅河は、壁に背を預けてずるずると座り込んだ。

チカチカと、辺りに星が飛んでいる。

がんがんと割れるように苛む頭痛は、治るどころかなおいっそう、酷い痛みとなって頭を襲う。

全身は、熱っぽく怠くて。

痺れて力が入らない。

思考もあやふやで、はっきりとしない。

こんなに酷いのは、初めてだ。

「さすがに……まずい、な……」

口から零れたのは、ほとんど吐息のような声で。

だんだん意識が薄らいでいく。






_____あぁ、立ち止まっている場合ではないのに。






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