誇り高き



後悔のないように、生きてきたつもりだった。


いつ死んでもいいように、覚悟してきたつもりだった。



それでも、何かもっと。

いい選択があったのではないか。




叶うなら、戻りたい。



何も知らなかった、あの頃に。


純粋なままでいられた、あの頃に。


無邪気に笑っていられた、あの頃に。


声を上げる笑い方は、もう忘れた。

声を上げる泣き方は、知らない。



互いに、こんな屈折した方法でしか。

苦しみを吐き出せない。





癒してもらうために。

無防備に傷を晒す勇気はない。




濁り、澱み、沈んでいくそれを。


ただ、黙って見ていることしか出来ない。



合わせた背中は、まだ互いに震えている。


涙が枯れても。

ずっと、二人はそのままでいた。













それが、最後だった。

二人が酒を飲み交わした夜は。







< 209 / 211 >

この作品をシェア

pagetop