「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
003:復讐




「ごちそうさま。」

僕にとって食料はとても大切なものだけど、あんなに良い笑顔を向けられたら、そんなこと言えるはずもない。



「これからどこへ行くつもりなの?」

「う…ん…
特にあてはないんだけど、とにかく、この山を越さないと町がないから…」

「なるほどね…」



麓の村ではそれなりにうまくやっていた。
うまく…というのは、仲良くという意味ではない。
ただ、問題が起きなかった…
いつもとは違って、僕の正体がなかなかバレなかった…
それだけのことだけど…

でも、三ヶ月も同じ場所にいられたことなんて今までなくて…
その間は、それなりに楽しいこともあって…



そりゃあ、最後はいつもと同じ酷い物だったけど…
それでも、あの村は他所よりはまだ良い記憶として残ってる。



(他所が酷過ぎたんだ…)



麓の村では、村から出ていけと追い払われただけだけど、これまではそんな生易しいものじゃなかった。
鋤や鎌を振り上げた人々に追われたこともあったし、寝ている時にあやうく焼き殺されそうになったことだってあった。



あいつは悪魔だ。
あいつは生きた亡霊だ。



だから、そんな奴は殺しても良い。
むしろ、殺す事が良いことだ…とばかりに、殺気だった顔をして僕を襲った。



(あの顔は一生忘れない…)



僕が生きていることは、そんなに悪いことなの?
僕は、何もしていない。
世界の片隅で、ひっそりと息を潜めて生きているだけじゃないか…
僕にお金でもあれば、人と関わることなく山奥に一人で暮らしても良いと思ってる。
月に何度か食料や必要なものを届けてもらって、そこから出ることなく過ごして…
だけど、僕にはそんなお金はない。
生きるにはお金がかかる…だから、働く…
それだけのことじゃないか…
なのに、世間の人々は僕にそんなことさえも許さない。



なぜだ…
僕が何をしたって言うんだ?

僕が、こんなおかしな身体なのが悪いっていうのか?



だけど、僕だってこんなこと望んだわけじゃない!
誰が好き好んでこんなこと望むもんか!
人から怖れられ、忌み嫌われるこんな身体…
この身体のことを一番呪っているのは、僕自身だ。



そして、僕をこんな身体に生んだ母さんを心の底から恨んでる。
いや…生んだだけならそこまでの気持ちにはならなかっただろう…
だけど、母さんは……



嫌な記憶と共に、自然と拳に力がこもった。

いつか、僕が死んだら…その時こそ、僕は本物のゴーストになって、復讐するんだ。



今まで、僕に酷い事をしてきた皆に…!

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