「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
「そ、そんな酷いことが……
で、でも、お金はおばさんが鞄の底に縫い付けたって…
たいした額じゃないけど、ここまで来るのには十分な路銀の筈だが。」



(鞄の底に…?)



僕はあの日母さんに投げ付けられた布の鞄を手で探った。
ランプと着替えがほんの少しと、薬の入った小さな鞄…



(あ……!)



僕の指先が異変に気付いた。
底板の下にさらに二重になった黒い布があり、そこに固くて丸いものが均等に並んで縫つけてあるのがわかった。
合わさった布を引きはがすと、そこから数枚の金貨が転げ落ちて、部屋の中に軽い金属音が響いた。



「……そんな……どうして……」

「気付いてなかったのか…!」

「だ、だって……あんな酷い追い出され方をしたんだ…
そんなものが入ってるなんて、考えてもみなかった……」

信じられない想いだった。
僕は転がった金貨を拾い集めながら、この金の重さを痛感した。
僕らの村の者は、皆、貧しい。
金貨なんて滅多に目にすることはないし、母さんがこんなお金を持ってるはずもないから、きっと皆で工面したんだということは簡単に察しが着いた。



でも、どうして…?
僕を化け物扱いして追い出した皆が、なぜそんなことを……?



「シンファ…あの頃、村に余所者が来てたのを覚えてるだろう?」

「余所者?
あぁ、話したことがあるよ。
道具屋のロイドさんの知りあいだって言ってた。」

「……奴らに身体のことを知られただろう?」

「え…?あぁ……不意に手を握られたからね。
彼らは驚いてはいたけど僕を怖がる様子はなかったし、気さくで話好きな感じの良い人達だったよ。」

「……奴らは軍隊の関係者だったんだ。」

「軍隊……?」

「そうだ…」

深く頷いたライアンは、事の顛末を話してくれた。
町に出入りをするロイドさんが、酔った勢いで酒場で話した僕の話を軍隊の関係者が偶然耳にし、僕に興味を持ったことが発端だった。
僕らの住む国は平和そのものだけど、同盟国の一つが隣国から戦争をしかけられ、苦戦していた。
そのせいで、僕らの国の軍隊も戦争に狩り出されていたけれど、戦況は悪化するばかり。
そんな時に、僕の話を聞きつけた彼らは、僕をスパイとして使うことを考えたんだという。
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