「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
012:指先




「ごめんな、狭くて……」

「ううん、僕の方こそごめんね。」



僕のために用意してあった部屋は、アズロが使うことになり、僕はライアンと一緒のベッドで眠ることになった。
大人同士が一つのベッドで寝るなんて、なんだか照れ臭いけど、でも、僕はライアンにどうしても話したいことがあったから。




「ライアン…子供の頃、お互いの家によく泊まりっこしたよね。
なんだか、あの頃のこと…思い出すよ。」

「そうだな……
俺のベッドはこれよりもずっと狭かったから、次の朝にはたいてい俺がおまえを押し潰しそうな格好になってて…
それなのに、おまえはそんなこともいやがらずうちによく泊まりに来たよな。」

「……そうだったね。
今では押し潰されたくても押し潰されないからね。
……良い思い出になったよ。」

「シンファ……」



僕のつまらない冗談が、ライアンの声を途端に沈ませた。



「あ、ごめん……
つまらないこと言っちゃったね…」

「いや…俺の方こそ……」



ライアンがそう言ったっきり、部屋の中に気まずい沈黙が流れた。



「あの…ライアン……」

沈黙に耐えきれなくなった僕は、彼に小さな声で話しかける。



「なんだ?」

「あ……あの、ライアン……本当にごめんね。」

「ごめんって、なにが?」

「う、うん……
……僕……君のことを信じきれなかった。
村の人や母さんの想いに気付けなかった…
そして、君達のことをずっと恨んで……」

込みあがる感情に、声が震えないように、一言一言、僕はゆっくりと話した。
僕がライアンに言いたかったその言葉を。



「馬鹿…そんなの当たり前じゃないか。
おまえにそう思われるくらいじゃないと、軍隊の奴らの目もきっと欺けなかった。
おまえが謝ることなんてひとつもないんだ。」

「ううん、そうじゃない!
僕は…気付くべきだったんだ。
僕の身体がこんな風になってからのことを考えれば……気付ける筈だった。
なのに、僕は、自分のことしか考えてなかった…
……だから、真実に気付けなかった……」

「そんなこと、当たり前だ。
俺だっておまえみたいなことになったら、きっと同じだったと思う。いや、もっと酷かったかもしれないぞ。
俺はおまえよりも感情的だし、皆に迷惑かけて暴れまくってたかもしれない。
俺はおまえの苦しみを想像することしか出来ない。
だけど、おまえはそれを体感してるんだもんな。
それに、まさか、こことは違う方向に行ってるとも、金に気付いてないとも思わなかった。」

ライアンはそう言って、呆れたように小さく笑った。
< 42 / 66 >

この作品をシェア

pagetop