「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
「あぁぁ……」

アズロがふわりと地面に降り立つと同時に、ライアンはへなへなとその場にへたりこんだ。



「こ、腰が抜けた……」

「なんだよ、ライアン。
僕はもっとずっと高い所を飛んで来たんだよ。」

「しかも、一度は落下した。」

「えっ!?」

アズロの言葉に、ライアンの顔はさらに青ざめた。



「集中力が緩んだんだ。
……アズロが咄嗟に助けてくれなかったら、今、僕はここにはいない…」

「あ……アズロ…ありがとう!!
こいつのことを助けてくれて、本当にありがとう…!!」

ライアンはアズロの足にすがりつき、涙を流さんばかりに何度も感謝の言葉を繰り返した。



(こんなライアンの気持ちを少しも知らずに、僕はここで馬鹿な真似をしようとしてたんだね……)

僕は自分の愚かさが恥ずかしく……心の中でライアンに詫びた。
いつかは話さないといけないとは思う。
だけど、今はまだ言えない。
恥ずかしくて情け無くて、言えやしないよ。



「ガーランドさん、空からの景色はすごいよ。
あんたも飛ばせてもらいなよ。」

「私のような体格の良いものは無理だろう。」

「そうだね。
長い時間は辛いかもしれないけど、少しなら大丈夫。
僕、こう見えてもけっこう力はあるんだよ。」

「本当か?
本当に良いのか?」



意外だった。
ガーランドさんは冷静で落ちついた人だと思ってたのに、アズロが頷いた時には子供みたいな笑顔に変わった。



ガーランドさんはアズロにおぶさるような格好で空に舞いあがった。
次第に高く登って行く二人を見上げながら、ライアンは心配そうな顔になり、空からは似つかわしくないガーランドさんの歓声が上がった。



「ガーランドさん、よく平気だな。
もうあんな所まで行って…
それにしても、飛ぶっていうのは歩くよりずっと早いんだな。
この分なら村へも早く着きそうだけど、俺は出来るだけ歩いて行きたいよ。」

「じゃあ、馬車で行けば良いじゃない。」

「うん…でも、よく考えるとおばさんがこっちに来る時にも路銀がいるだろ?」

「そっか……あ、でも、母さんはきっとライアンみたいに高い所が苦手じゃないと思うよ。
ほら、以前僕の母さんと君の母さんと、あと何人かできのこ採りに行ったことがあったじゃない。
あの時、母さんは山からの景色を一番楽しんでたもの。」

「そうだったな……
あの時、確かロイドさんが誘ってくれたんだよな?」

「そうだったかな?僕はまだ子供だったしあんまりよくは覚えてない……」



(あの時の僕はまだごく普通の子供だったね…
山を登る時も、母さんと手を繋いで登った……
そのことは、はっきりと覚えてるよ……)


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