「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
「あ、そういえば、ライアン…
祠ってどこにあるの?」

「祠って…精霊の祠のことか?
行っても見るようなものは何もないぜ。」

「うん……でも、ちょっと行ってみたいんだ。」



そこに行った所で、母さんが巫女だったことを実感出来るわけもない。
そんなことはわかっていたけど、それでもなぜだか僕はその場所を見てみたかった。



「そっか…じゃあ、行ってみるか?」

「あ、ライアン、足が痛いなら教えてくれるだけで良いよ。」

「……大丈夫だ。」



ここは、不自然な程に広い。
この山はさほど大きな山までもなく、しかも、森の奥の洞窟のそのまた奥にこの村はある。
山の規模からしても、これほど広い敷地があるはずはないと思うのだけど……



あちらこちらに家が点在していた。
それらはどこも人の住む気配はない。
家の数からして、僕の村と人口はさほど変わらなかったと思う。
でも、広さはこっちの方がずっと広い。



「ねぇ、ライアン…
僕の母さんの家はどこだか聞いてる?」

「あぁ、ガーランドさんの家より西の方だ。
おばさんは御両親と妹さんの四人暮らしだったらしいぜ。」

「えっ!?母さんには家族がいたの?」

「おまえ、そういうことも全然聞いてないのか?」

「うん…母さんは、身寄りがないって言ってたから僕はそれを信じてた。
そっか……僕にはおじいさんやおばあさん、それにおばさんもいたんだね。」

「そういうことだろうな…でも、おばさんの家族は、おばさんが出て行ったすぐ後に村を出たらしいんだ。
……おばさんのしたことでここには居辛かったんだろうな…」

「……そうだろうね。」



村の掟を破って男と駆け落ちするなんて……
母さんの家族が居られるわけないよね。
母さんもそのことを家族に悪いと思ってるから…だから、僕には身寄りがないなんて言ったんだろう。
きっと、二度と会うことは出来ないって…そのくらいの覚悟を持って村を出たんだろうね。



僕の知ってる母さんは、けっこう美人な割りには、とても真面目だったと思う。
何年か前に、再婚話をもちかけられたことがあったけど、私は一生再婚はしないってきっぱり断ってた。



母さんはそれほど父さんのことを愛してたのかって思ったけど…
もしかしたら、家族や村の人達への罪滅ぼしのようなつもりだったのかもしれないね……







「あそこだ!」

村のはずれの行き止まりに、ぽっかりと開いた入口があった。
僕らは薄暗いその場所に足を踏み入れた。

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