「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
「……わかっておる。
おまえが、あの青年が大きくなってから異変が起こるよう呪いをかけたのは、そうでなければ自分でものを食べられることの出来ない赤子が死んでしまうことがわかっていたからだ。
おまえは生まれて来る子を殺す程、冷酷ではない。
ただ、あの巫女の舞いや歌を忘れることが出来なかっただけだ。
たとえ、村の異変では戻らずとも、我が子にあのような異変があれば、その時こそは戻って来ると…おまえはそう考えたのだろう?」

咎めではない優しい声に、セルフィナは何も言わずにただ小さく頷いた。



「だが、待ち焦がれていた巫女の舞いは少しも愉しいものではなかった。
そして、あの息子が今まで味わって来た苦労の数々を知り、おまえはようやくやりすぎてしまったことに気が付いた。」

「……仰る通りです。」

「おまえは昔から特別に歌や舞いを好んでおったからな。
その純粋な気持ちが高じて、間違った方向に進ませてしまったのだろう。
しかし、仲間達や人間達が去った今もなおここに留まっておるのは、おまえがここを愛し……自分でもやりすぎたことを後やんでいるからだ。
大好きだったこの場所をこんな風にしてしまったことを、悲しんでいるからだな……」



セルフィナは、俯いたまま何かをじっと考え…そして、顔を上げるとか細い声で話し始めた。



「主様……私は…どうすれば良いのでしょう?
彼になにかしてやれることはあるでしょうか?」

「……ないとは言わぬが、少々事態が込み入り過ぎた。
ここは私の力を遣うしかなかろう。
それも、最大限の力だ。
当分はわしもここには来れぬぞ。
……それと、おまえも何も罰を受けないというわけにはいかぬ。
おまえも働くのだ。
それと勉強して来なさい。
わしの力が戻るまでゆっくりとな。」

「……働く?どこで働くのです?
何を勉強せよと仰るのですか?」



セルフィナの問いに、老人は静かに微笑を返した。
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