† トータル †








あたしは“これからよろしく”の意味を込め、2人に夕食を作った。

2人は美味しいと喜んで、笑ってくれた。



料理は、あんまり記憶にないけど、あたしのお母さんから教わった、唯一の特技。

何故かお母さんは、危ないはずなのに、3歳の頃から料理を教えてくれたんだ。

怖かったけど、今役に立っているから、教えてくれて良かったと思える。




小学校へは、美果がお金を出してくれた。

親戚の家では、お金はもらえなかった。

もらえたのは、ポイントだけ。



あたしは生まれた時の名字ではなく、風林寺を名乗った。

親戚の家で泥棒という職業を知った時から、あたしは風林寺家の人間だと決まっていたから。

今更、変えることなど出来なかった。




あたしは1年生のクラスで、ある再会を果たす。

美果や杏奈と暮らす前に出会った、不思議な少女。

イオこと、稲葉織子と再会したのだ。




織子も両親がいないと言うので、美果の家で暮らすことになった。

織子にあたしの手料理を振舞ったら、珍しく美味しいって笑ってた。

これ、あたしの密かな自慢。




しかし、あたしは今だ聞けずにいるのだ。

織子がなぜ、

あの裏道で出会った時、



哀しそうな表情を浮かべていたのか――――・・・。








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