世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話

「何見てんの?」

「ん? 卒業アルバム」

 上から降ってきた言葉に、顔を上げて答えた。

 彼は箱詰めしたダンボール箱を車に運んでくれていた。
 力仕事任せっきりで勝手に休憩しちゃっててごめんねと言うと、本とかアルバムの整理は時間かかるよな、つい見ちゃうから、と笑って許してくれる。

 それから、彼は私の卒業アルバムを見て目を輝かせた。

「おお、あこがれのK女学院の天使たち!」

 彼の口調が半ば冗談だったから、私は笑いながら「はい、どうぞ」とアルバムを手渡す。

「え? いいの?」

「いいわよ。隠す事なんて、何もないもの」

 彼は嬉しそうに、アルバムをめくる。

「さくらは、3年何組?」

「え? 忘れちゃったよぉ」

「マジ?」

「じゃあ、修一くんは覚えてるの?」

「いや」

「ほら~」

 お互いに顔を見合わせて笑った。

「お、いたいた」

 彼はめざとく私の存在を見つけたらしい。
 へえ、私、3年4組だったんだ。と、まるで他人事のように思う。

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