世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話

「なあ、さくら、なんでこんな仏頂面なの?」

「え? そんな変な顔してる?」

「変顔じゃないけど、まあ、なんてゆーか、やけにブスーっとしてるっつーか」

「……写真、苦手だったのよ」

 写真も好きじゃなかったけど、そもそも、あの頃は、人間そのものにあまり興味が持てなかった。と言う事は、つまり、学校そのものにも愛着がないって事。
 中学も高校も大学も、卒業式ではもちろんケロリとして、涙なんてカケラも流さなかった。大学以外は校舎が移るってだけで、基本メンバーは変わらないってのに、泣いてる子がほとんどで、逆に冷めた気持ちになったのを思い出す。

「なあ、お嬢様学校ってどんなとこ?」

「え? なに突然」

「昔っから気になってたんだよな」

「いい年したおじさんが、やめてよ」

「って、おじさんかよ」

 彼の不満げな声に慌てて謝る。

「ごめんっ!」

 彼が結構年上なのは重々承知。むしろ、一回り以上も年下な事を私の方が気にしてるくらいだ。
 でも、悪気はないからって、うっかりおじさんなんて言うのはないよね?

 でもさ、セーラー服着た自分の写真なんてものを見ていると、気持ちがあの頃に戻っちゃって、そうするとやっぱり、30代後半ってのは、紛れもなくおじさんなんだ。だけど、それを言うなら、高校生的には20代前半だって、もうおばさん!?

 思わず複雑な顔をしていると、彼は私が何を考えてると思ったのか、こんな事を言い出した。

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