神様の憂鬱
「どうして泣いているの? なにがそんなに悲しいの?」

毎晩のように呼びかけてみるが、返事はない。

「ボクの声が聞こえないの?」

新たにこぼれた涙を指先で拭い、髪の毛をそっと撫でた。

反射的に身体が動いた。

ゆっくりと瞳がボクを見て、震えるように唇が動く。

「ごめんなさい」

「なにが? なにがごめんなさいなの?」

訊いてはみるが、こうなったらもう駄目だ。

それはここ何日かでわかっている。

紗良奈は、何度も何度もごめんなさいと繰り返す。

ボクを写さない瞳で。

いったい彼女の見る世界には、なにがあるというのだろう?

それさえわかれば、まだなんとかできるかもしれないのに。

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