神様の憂鬱
「紗良奈――」

ボクは彼女の瞳に手をかざし、背中を支えながらベッドに倒した。

彼女はされるがままになりながら、枕に頭をつける。

そして――

「眠りなさい」

力を使い、今日もこの世界から遠ざけた。

数秒もすると、部屋の中には静かな寝息がこだまする。

濡れた頬は、まだ乾いていない。

それでも、これ以上濡れることはないだろう。

やわらかな月の光が、彼女の身体を包んでいる。

パチンと指を鳴らすと、その光に温かみが増した。

それを横目で眺め、この部屋をあとにする。

天歌の歌でも聴かなければ、とてもじゃないけれどやりきれないから。

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