神様の憂鬱
生きている限り、嫌なこともある。

いいことは、ほんのちょっぴりなのかもしれない。

それでも人間は、ほんのちょっぴりのいいことを求めて生きているのかもしれない。

なんとなくだが、そう思った。

人間の気持が、少しだけ理解できたような気がした。

目の前に眠る、紗良奈を通して。

んん、と小さなささやきが漏れる。

唇が声にならない言葉を作る。

いつもなら、目が覚める前にはこの部屋を出ていた。

見つかるとまた怒られるからだ。

でも、今日はこのままでいたかった。

紗良奈が目覚めて最初に見るものはボクでありたかった。

数時間ぶりに彼女の瞳が写すものは、天井でも壁でもドアでもなくボクがよかった。

なぜそんな風に思うのかはわからない。

これが天歌の言う恋なのだろうか。

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