神様の憂鬱
彼女はその場に立って僕のことを見つめ、

「もういいわ。わたしは入るから、おとなしくしていて」

そう言ってドアを閉めた。

あーあ、また怒ってるよ。

そんなに怒って疲れないのかなぁ。

ソファーに座って、カップに残っていたコーヒーを飲んだ。

ん、やっぱり変な味。

だけど癖になりそう。

ザァー、と水の音が聴こえてきた。

あれがシャワーとやらの音なのだろう。

ごろりとソファーの上に転がって、その音に耳を傾ける。

強くなったり弱くなったり、天歌の弾く弦みたいだ。

天歌は今頃、何しているんだろう。

昨夜聴いた曲を思い出し、小さな声で歌った。

屋根の上よりやわらかくて気持いいや。

人間の作り出すものも、棄てたもんじゃないかもしれない。

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