♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「うれしい気遣いね、アナタみたいな人ばかりだと、私も楽なんだけれど…

そうなのよ。つい最近も、三本ある内の一本、マジックナイフがどうも無断で持ち出された形跡があるのよね。」

「どんな感じのナイフですか?

もし、私達の方にそのナイフについて情報が入ってきましたら、すぐお伝えしますから。」

「ありがとう。少し待ってて。



…お待たせ。こういったナイフなんだけれど…」




「…あの人、几帳面だから、紛失物は見逃すはずは無いってふんだけれど、大当たりだったわね。

…それにしても、礼士先輩、思った以上にあのナイフ、巧妙な作りでしたね。

私、あんなに巧妙に作られたマジックナイフ見るの、初めてです。」

「確かに、かなり特注品だな。

…半分、いや、ほとんど凶器そのものだよ。」

二人が、演劇部の部室で見たマジックナイフとは?

-一般的な、ナイフの根元が引っ込む物では無く、ナイフの先の尖った部分から測って、約五ミリほどの部分が取り外せる様になっていた。

イメージとしては、円柱の上に、三角錐が乗っかっている様な作りで、その円柱と三角錐の接着面が、不定形にギザギザした磁石になっていた。

そしてその接着面以外は、実は本物のナイフで、それを突き刺すと、対象物に食い込んだ先っぽが取れ、更に残ったナイフの方、つまり先程の例で言うならば、円柱の接着面の真ん中には、液体が入る穴があり、そこに仕込んでいる、水で溶いた赤絵の具が流れ出る仕組みになっていた-

「…恐らく、ハルちゃんが見たその二人組(※因みに、ヴァンパイア礼士は、礼士である状態の自分も記憶しているが、安宮礼士自身は、ヴァンパイア礼士として行動している時の記憶は覚えていない。)が使用しようとしている道具は、これに違いない。

でも、こんな特殊な道具、どうやって復讐に使用…」

「…もし、それを私が想像している様な使い方をしようとしているのなら、私、小谷静を、人として軽蔑する!」

「えっ?」
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