♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「お、おいハルちゃん!一体どうし…」

「共犯者達は、小谷静と京子の事であっても、実行者達は、小谷静と京子に見せかけた、ヴァンパイアとその助手の事…

ヴァンパイアが、今回のトリックで別に用意したのは、マジックナイフじゃなかった…

…ヴァンパイアの計画を成功させる為の助手、つまり、恵さんだったのよ!」

春子は、ぐいぐい礼士を引っ張りながら、勢い良く第二美術室の扉に手をかけ開いた。

突然の訪問者に驚く恵の前に、春子は礼士と共に駆けつけた。

恵は、椅子に腰掛け、自分の作品を前に驚きの表情のまま、春子と礼士の二人を見つめ固まってしまっていた。

春子は、恵の右手に持たれた物に注目しながらも、こう恵に語りかけた。

「…恵さん、あなたもしかして、直接会った事は無くても、謎の人物から、何かをささやかれたんじゃないですか?

…例えば、自分で自分の作品を壊す為の、手助けをしてやろうか、って。」

その言葉が、あまりにも衝撃的だったのか、恵はポロッと、誤って右手に持っていた物を床に落としてしまった。

それは、床に落ちた衝撃で、中からドクドクと赤い液体が流れ出した。

…つまりは、ヴァンパイア礼士が言っていた、恵の作品を台無しにしてしまう為の、もう一本のマジックナイフだった。
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