♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「…だ、大丈夫よ、めぐ。

私も、腕の調子が悪いからって、休んでなんかいられない。

だって、ほら、後ろを見て。

一年が経って、少ないながらも、新入部員が入ってきているわ。

休養で、二週間ぶりに顔を出したからといって、あの子達の期待を裏切る訳にはいかないでしょ?

私は初対面だけれど、あの子達、私達の『輝きの魔術』に惹かれて、この部に入部しに来たって聞いてるわ。

最優秀賞を取ったって言ったって、年に二回位しか大きな絵画展は無いし、広報誌が作られるのも、それにあわせて二回。

実質、春風展と全高展の内容しかみんな知らないんだから、ここできちんとしておかないと…」

「…そ、それはそうなんだけれど…」

「…どうしたの、めぐ…」

-あ~あ、私もおととい、美術部に顔出しておけば良かったな。

ピアノのレッスンあったから、見逃しちゃった。-

-それは残念。雪野先輩の、ナイフ使い、すごかったのに。

あんなテクニック、見たこと無かった。

あれが光の芸術、輝きの魔術師…-

「…めぐ、どういう事?あの子達のささやいている事は?

アンタまさか、私のいない間に勝手に、あのナイフの技法披露したんじゃないでしょうね!

第22回全高展の時はイレギュラーで、アンタに続きを託したけれど、元々のアンタのパートは、筆による下地作り。

ナイフは、私の…」

-所で、さっきから雪野先輩の横にいる人、誰かな?-

-さあ、途中で参加してきて、雪野先輩の手伝いし出したから、お手伝いさんじゃないの?

雪野先輩ぐらいの人にでもなれば、助手の一人や二人いても不思議じゃ…-

「…たった一回の入院が、私から全てを奪ってしまってたって訳ね…




…後は、任せたわ。輝きの魔術師さん。」

「ま、待って、静ねえ…」




…誰も、一言も離さず、恵の涙の告白をじっと聞いていた。

そしていつの間にかその場には、春子と礼二、恵以外に、真実を知って驚きの表情を見せ合う恵の後輩達や、涙もろいのか、鼻をずるずるいわせながら、ハンカチで涙をふきつつ耳を傾けている太田部長がいた。
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