散る頃に咲く花

「いや、あんたを運んだのは総司だ。俺が運ぼうとしたらあんたに触れるなと言っていた」

此方を振り返った斎藤の目は赤くなっている。

すっと、泣いていたからだろう。

「一君、勝手に言っちゃだめだよ」

その時沖田の声も聞こえた。

沖田も二日酔いだろうか、頭を押さえている。

「あ、朝餉の支度」

青葉は急に思い出した。

朝餉の支度をしに行こうとし、青葉が立ち上がろうとすると、斎藤に止められた。

「朝餉を食う奴は、今日はきっといない」
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