幕末の月
暗い部屋




いつになったら自分は変われるんだろう。



いつまでもこのままじゃダメだし、いい加減前を向かなきゃいけない。



だけど、今の私じゃ過去を振り返ることも未来に向かうこともできない。



暗い部屋で過ぎ去っていく”今”の中にうずくまることしかできなかった。



あれから半年は経っただろうか。



今でも記憶が鮮明に蘇る。

頬に、乾いた熱を感じる。

耳に、みんなの声が届く。

首の傷が痛みをぶり返す。



みんなの名前を呼ぼうするけど、喉が締め付けられているようで声が出ない。



「…っ由香、春乃、菜穂ちゃん…っ!」



呼吸が苦しい。



目に浮かぶ涙は過呼吸のためか、思い出したためか_。



呼吸が整うと、ふいに外の空気を吸いたくなった。



てきとうなTシャツとジーンズを着、スマホを持って家を出た。



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