CHECKMATE


『蜥蜴』と呼ばれた男は、ビクッと肩を竦め硬直した。
そんな男の反応を愉しむように震え気味の肩にポンと手を乗せ、

「かくれんぼは、もうおしまいか?」

優しい声音で囁いた男だが、言われている本人はそれとは相反する表情を浮かべていた。
からくり人形がゆっくり振り返るように、ぎこちない仕草で背後の男に視線を向けた。

「ちっ、千葉さん………どうしてここが?」
「俺から逃げられるとでも思ったか?」
「クッ……」

ニヤリと蔑んだ表情で見下ろした若い男。

彼の名前は千葉一輝(ちば かずき)。
警視庁刑事局刑事部捜査一課の刑事で、27歳という若さで警視の座にいる、いわゆるエリート刑事というやつである。

普通、エリート街道まっしぐらの刑事は現場より事務ワークや指揮官を好むが、この千葉という男は一味違う。
己の目で見て、己の足で確かめ、己の勘で事件を解決する……典型的な野生刑事なのである。
だからこそ後輩にも慕われ、年長者の先輩方にも可愛がられる、ちょっと変わった逸材である。

そんな風にして地道に、しかも確実に事件を解決し、気付けば『検挙率No.1』と謳われるまでに。

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