CHECKMATE


「やはり、彼女も加担させられているみたい」
「…………そうか」

出来れば違って欲しかった。
ジョアンがごくごく普通の主婦であり、妊娠を切に願う女性であって欲しいと。

だが、倉賀野が新たに見つけたファイルを紐解くと、カルテの配偶者の欄にクラブの名前でもないものが存在していた。
そこには『No-J』と記されており、それが何を示しているのか、夏桜が調べていたのだ。

ジョアンが半年前から通院し、頻繁に処置を受けていることになっている為、夏桜は次の周期に採卵するという予定で通院し続けていた。
そして、カルテにあった名前の女性を見つけ、接触したという訳だ。

夏桜の勘通り、その女性こそがジョアンであり、確かに頻繁に通院している。

目的は分かっている。
だが、その経緯が不明確な為、どういうルートでブラックホールに落ちるような事態になったのか、それを調べていた。

『No-J』というのは、Non Japanese(日本人ではない)という意味だと夏桜は考えている。
ジョアンと同じファイルにあと2人の女性の名前があり、そのどちらとも日本人ではないのだ。
配偶者がおらず、日本人ではないという状況下で、あの病院に通う目的を一直線上に置くと、新たなルートが存在することとなる。

既に剣持と水島がその線で調べている。

ジョアンは、フィリピンにいる家族を養うために上野にあるパブで働いているという。
婦人科に不妊治療で通っているのだから、当然夫がいる身のはずだが、その話題になると『イソガシイヒトネ』と、いつもはぐらかされてしまう。

恐らく、最初から『夫』は存在せず、あの病院の悪事に加担する経緯で嘘を吐いていると認識した。

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