CHECKMATE


「触らないでッ!!」

突然、声を荒げた女性が1人。
その声の主はまさしく、先程の女性だった。

女性は真剣な表情で彼女の手首に指を当てた。
そして、すぐさま彼女に声を掛けるが、返事は無い。
呼吸を確かめる為、顔を近づけると、眉間にしわを寄せた。

混雑する夕方の時間帯。
次々と野次馬が増え、辺りは騒然としていた。

「誰か、救急車を呼んで下さい!!」

突然、叫んだ彼女の言葉に先程の男性が声を掛けた。

「俺がします!!」

そして、彼女は鞄からポーチを取り出し、そこからビニール製の手袋を取り出した。

「君は医者か?」
「今はあなたと話をしている暇は無いのッ!!」

千葉の言葉に苛立ちを露わにして答えた彼女。
千葉はその言葉で我に返った。

警察官たる者、人命救助が何より優先。

目の前で苦しんでいる人が居るのに、それを助けようとしている人の事をとやかく言うのは筋違いであると。

千葉は素早く上着を脱ぎ、横たわる女性の足下にそれを掛けた。

< 30 / 305 >

この作品をシェア

pagetop