CHECKMATE


ポケットから煙草を取り出した千葉はそれを口にくわえ、オイルライターで火を付けた。
そして、『お前も吸うか?』と言うように煙草を蜥蜴に差し出す。
蜥蜴は軽く会釈しながらそこから1本取り、千葉の手により煙草に火を付けた。

静かに煙草を吹かす息遣いしか聞こえない。
爽やかに吹き抜けるビル風に煙草の煙が流されてゆく。

もうじき煙草が吸い終わろうとした頃、蜥蜴が静かに口を開いた。

「あまり、いいネタはありませんよ」
「………何でもいい。お前のネタなら信用できる」
「………………ったく……」

この『蜥蜴』と呼ばれた男は、俗にいう『情報屋』というやつだ。

新聞記者を10年近くした後、探偵事務所を立ち上げ、今はあちこちの雀荘や夜の繁華街で姿をカモフラージュしながら天性の才能で情報を入手している。

多くの刑事にはこういった情報屋は必ず居て、それは千葉とて同じである。
蜥蜴は渋々だが、情報を提供した。

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