ある男子高校生の恋愛事情【三井編】


なんとなく気まずくて黙って2人で歩いた

芽衣子の手を離そうとしたけど

その度にギュって握るから、そのままでいた



分かれ道にきた

「俺、体育館行くから。お前はもう帰れ」


何も言わない。やっぱり怒ってる



「じゃあな」と言って手を離した



「慎吾」

「……なに」


「おにぎり、もういらないの?」

まだ、言ってる


「いらない」

「なんで?」


「さっき、言ったろ」と少し横を向いた


「あんなんじゃ、分からないよ」

「俺、芽衣子に謝ってばかりだから」


「……え?」

「速く走るのも、作るのも、大変だろ」



“先輩にはついていけない”
“このやり方には納得できない”



「俺の近くに居たら、しんどいだろ」



あーあ

最近まで忘れてたのに


「だから、いらない」



頑張っても無理だってもう知ってるんだ

だって性格なんて、考え方なんて簡単に変わらない



手に入れたくて頑張ったけどダメだったから

俺のやり方じゃダメだって知ったから




それならば

こんな風に手放した方が



楽かな………って




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